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イノシシは美味しい物を良く知っております。ジャガイモを植えても、ダンシャク、メークイン、キタムラサキ等々の中から美味しい物を選んで食べます。
更に野菜の苗類も好きです。タマネギの苗を植えると一晩で食い尽く事も珍しくありません。
稲は結実直後の柔らかい物が好きです。収穫直前に何割かをイノシシが食べてしまい「誰の為に作っているのか分からない」と農家の声を聞く事もあります。
イノシシは稲を食べるだけならまだしも、お腹がいっぱいになったら田んぼで「ノタ打ち」(身体に付いたダニを落とすために泥濘で転げまわる行為)をするのです。苗から植えつけて半年、収穫する直前の稲も一晩でダメになってしまいます。
農家は一年中、イノシシやシカと戦いながら耕作を続けなければならないのです。
農家の苦労を考えると決して食べ物を粗末にする気にはなれませんね。
さつま芋で言えば、イノシシの恰好の餌になるので耕作を諦める農家もあります。
私の母はさつま芋を作ることがとても上手でした。ツル苗の作りをよく手伝わされました。 それは雨が降りそうな日にやるのです。雨が降る日に苗を植えると、水遣りをしなくて良いのです。 芋のツル(葉柄)もよく食べました。薄皮を剥ぐのは、子供の仕事でした。 煮干の出汁で煮付けにしたような記憶がありますが、何しろ半世紀も昔のことゆえ事実は定かではありません。
芋のツルを食べるなんて、自分の家は貧乏なんだと思っていましたが、今になって間違いだと気が付きました。 母の作る芋は美味しいと村で評判になり、皆が欲しいとやって来ます。 母は一年目には差し上げます。二年目には作り方を教えてから種芋を差し上げると言っていました。 そして三年目に貰い来られる時には差し上げないと話してくれました。(さすが我が母、厳しい)
そこで私は母に尋ねました。
「芋を作る秘訣ってあるのか?」
母は少し笑いながら「芋も子供も一緒、あまりに手を掛けない事、ただ育つのを待つだけ」だって。
「おふくろさん、大事な息子をさつま芋と並べて言わないでよ」